2026年09月14日

研究開発

東京農工大学との共同研究により悪臭を感じとる受容体の応答を抑制する新規化合物を発見 ―空間のニオイ悩みにアプローチする、無香性・微香性の消臭剤開発へ―

エステー株式会社(以下、エステー)は、国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院生命工学部門 福谷洋介准教授らとの共同研究により、悪臭を感じとる受容体の応答を抑制する「無香性・微香性の消臭成分」の特定に成功しました。

研究の背景

ヒトは鼻の奥の嗅上皮にある約400種のニオイを感じとる受容体(ニオイセンサー)に、ニオイ分子が結合することで、ニオイを知覚します。従来の消臭剤は、物理吸着や化学反応を利用した消臭機構に基づいており、悪臭成分に消臭成分が直接触れる事で消臭する仕組みでした。そのため、広い空間に対して効果を発揮することが比較的難しいという課題がありました。そこでエステーは、空間の広さに縛られず悪臭の知覚を低減させる、次世代型の感覚的消臭技術である嗅覚受容体抑制技術(※1)の開発を進めてきました。
この嗅覚受容体抑制技術に関するこれまでの研究では、一部の香料分子が悪臭に対する受容体の応答を抑制することが見出されていました。しかし、近年は無香性・微香性の消臭製品に対するニーズが高まっていることから、本研究では、主に低臭気性の有機溶剤やシリコーン系揮発性化合物を対象に、ニオイを感じとる受容体の働きを抑制する新規アンタゴニスト(※2)化合物の探索を行いました。

(※1)悪臭の原因分子に応答するヒト嗅覚受容体の機能活性を抑制する化合物などを使用し、悪臭の知覚そのものを低減させる技術のこと。
(※2)受容体の応答を抑制する(=ニオイを感じにくくさせる)働きを持つ化合物のこと

本研究の特長と成果

1. 悪臭を感じとる受容体へのアプローチ

足臭や汗臭などの成分として知られる酢酸やイソ吉草酸等の酸系悪臭、および特定悪臭物質に指定され、排便臭や生ごみ臭などの成分として知られる硫化水素やメチルメルカプタンに応答する、約400種の中の特定の受容体を対象にアプローチしました。
また、揮発性化合物の曝露直後からのリアルタイムな受容体応答を評価できる細胞試験を実施し、候補化合物を絞り込みました。

2. 受容体の応答抑制によるヒトの鼻での消臭効果

選定した候補化合物を用いてヒトによる官能評価を実施した結果、悪臭の臭気強度の低減が確認され、中にはそれ自体のニオイが極めて弱い(何のニオイであるか分かる弱いニオイ以下)無香性・微香性の化合物が存在することが分かりました。
さらに、応答する受容体が同じであっても、対象とする悪臭ガスによって効果的なアンタゴニストとなる化合物が一部異なるという知見も得られました。

エステーは、今後さらに嗅覚領域における研究開発を深耕し、家庭や様々な空間における空気の課題を解決する製品の開発を目指し、社会に貢献していきたいと考えています。

なお、本結果は法政大学で開催された「第39回 におい・かおり環境学会(2026年8月24日~8月25日)」、および盛岡にて開催された「日本味と匂学会 第60回大会(2026年9月9日~9月11日)」にて発表いたしました。