2022年06月10日

研究開発

アンモニア・トリメチルアミンに応答するヒトの鼻にある受容体を同定 ― 消臭作用のある香料も数種発見 ―

エステー株式会社は、国立大学法人東京農工大学との共同研究で、アンモニアおよびトリメチルアミンに応答するヒトのトレースアミン関連受容体(※1)を同定し、実用的な消臭作用のある香料物質の探索を行いました。

ヒトがアンモニアをどのように知覚しているか、これまで明らかになっていませんでしたが、今回当社が開発した、気相(※2)中のニオイ分子を受容体に呈示する試験方法を用いることにより、アンモニアがトリメチルアミンと同じトレースアミン関連受容体に受容されることを見出しました。これは、ヒトがアンモニア臭をトレースアミン関連受容体により知覚していることを示唆しています。
また、100種以上の香料物質の中から、アンモニアまたはトリメチルアミンに対する受容体の応答を抑制する作用がある香料物質を数種発見しました。
さらに、それらの香料物質を用いて、人体での官能評価試験を行ったところ、アンモニア臭・トリメチルアミン臭の消臭作用が他の香料物質と比較して高いことが分かりました。

アンモニアやトリメチルアミンは代表的な「悪臭」の一種であり、悪臭防止法(法令番号:昭和46年法律第91号)においては特定悪臭物質に指定されています。アンモニアは尿のようなニオイ、トリメチルアミンは腐った魚のようなニオイと表現され、家庭においてはトイレ空間や冷蔵庫内、生ゴミなどから発生します。特にトリメチルアミンは嗅覚閾値(※3)が低く、感覚的に消臭する技術の開発が求められてきました。

当社は、今後さらなる研究を進めていき、家庭や様々な空間における空気の課題を解決することで、社会に貢献していきたいと考えています。

なお、本結果は、「第22回 日本蛋白質科学会年会(2022年6月7~9日、於:つくば国際会議場およびオンライン開催)」で発表しています。また、本手法、抑制剤などの成果物については特許出願済みです。

(※1)トレースアミン関連受容体:鼻の奥の嗅上皮にあり、アミンを検知するセンサーの役割を持つタンパク質のこと
(※2)気相:気体が占める部分のこと
(※3)嗅覚閾値(いきち):ニオイを感じる最低濃度のこと