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都会で花粉症が増え続ける理由とは?


「急に花粉症になった! 前年までは平気だったのに……」そんな経験をしたり、話を聞いたことはないでしょうか。東京都は2017年末、「都民の2人に1人(48.8%)はスギ花粉症の有病者」という驚きの調査結果を発表しました。一部調査方法が異なるものの、10年前と比べ約1.7倍! なぜ、東京のような都会で花粉症が増えているのか? 国立大学法人埼玉大学大学院教授の王青躍先生に取材しました。

人は「花粉を入れるバケツ」を持っている

花粉は毎年飛んでいるはずなのに、なぜ、突然花粉症になることがあるのでしょうか?
「花粉などアレルゲン(アレルギーの原因物質)を入れる”バケツ”を、体の中に持っているとイメージしてください」と王先生。

たまったアレルゲンが、バケツに入り切らずにあふれると、花粉症が発症すると言います。突然体質が変わるわけではないのですね。

バケツの大きさは人によって個人差があり、食生活やストレスなど環境によっても異なると言われています。

都会で花粉症が増える理由①「花粉が吸収されず再飛散」

では、なぜ東京都民の花粉症が増えているのか? 花粉がすぐそばで飛んでいる栃木や群馬、奥多摩に住んでいる人は、都心の人より花粉をたくさん吸って、花粉症にもなりやすいように思えます。

王先生によれば、原因のひとつが地面。田舎の地面は土なので、落ちてきた花粉が吸収されます。いっぽう、都心の地面はコンクリートやアスファルトで覆われています。遠くから飛んできた花粉が地面に落ちて再び舞い上がる「再飛散」が大きな問題なのです。

都会で花粉症が増える理由②「大気汚染が花粉症を悪化」

さらに、王先生は花粉と大気汚染の関係を重視します。PM2.5のようなごく小さな粒の大気汚染物質と接触した花粉は、細胞が壊れやすくなり、やがて破裂するからです。小さくなった花粉アレルゲンは、鼻や喉のフィルターをすり抜けて体に入りやすく、私たちのバケツも早くいっぱいになってしまいます。

しかし、大気汚染はむしろ改善されているはずではないでしょうか?

確かに、注目されるPM2.5の値は、減少傾向にあります。しかし、もっと小さい粒子のPM0.1(直径1万分の1ミリ=0.1マイクロメートル以下の超微粒子)は環境基準になく、量はさほど変わっていないと王先生は指摘します。

バケツの中の花粉は、シーズンごとに限界へ近づいているのです。

都会で花粉症が増える理由③「生活習慣の変化と低年齢化」

かつて一般的だった木造家屋は、外気がたくさん入り込むつくりで、また住居以外の環境もいまほど清潔ではありませんでした。一方、現代の日本の住宅は断熱性、気密性に優れ、子どもたちを取り巻く環境はより清潔になっています。そのような衛生的な環境が、子どものアレルギー性疾患と、その一種である花粉症の発症を増加させていると言われています。

さらに、親世代のアレルギー体質が子どもに遺伝することで、花粉症の低年齢化に拍車をかけているとも考えられるのです。
また、花粉は低い位置の濃度が高いため、背の低い子どもは大人よりも体内に取り込むリスクが高いのだと王先生は指摘します。

まとめ:これからどうなる? 都会の花粉症

王先生は「都会で花粉症が増えているのは日本だけの問題ではありません」と教えてくれました。北米はブタクサ、ヨーロッパではイネ科の花粉症が、これまでも問題になってきました。アジアでは、上海のような大都市で大気汚染、生活環境の変化が進み、同時に花粉症患者が増えています。

東京で花粉症が増えるのは、特別な現象ではないのです。一部では、「将来都民の3人に2人が花粉症に」との見方も。王先生は「いずれ大半の人が花粉症になっても、まったく不自然ではありません。大気汚染や花粉症の適切な対策をとる必要があるでしょう」と注意を呼びかけています。

参考:東京都健康安全研究センター「花粉症患者実態調査」

プロフィール

国立大学法人埼玉大学大学院理工学研究科・教授
王青躍さん

工学博士。環境科学研究者。都市大気汚染計測、対策技術、再生可能なエネルギー開発などを行う。特に、近年、都市部花粉とそのアレルゲン物質の挙動、PM2.5などの大気汚染による花粉症への増悪、花粉症や大気汚染対策について、NHK総合テレビの「おはよう日本」をはじめ、五十数件のテレビ番組等に出演。原著論文ほか、新聞・雑誌でも研究結果が数多く取り上げられている。
公式サイト: http://park.saitama-u.ac.jp/~wang_oseiyo