PROJECT

「ムシューダ」開発物語

「無臭」なのに「香り付き」。
創業当時からのトップブランドの存在意義を揺るがす
挑戦的な商品の開発。

創業時より製造する防虫剤の歴史。

1946年終戦当時、着物を虫食いから守るため、エステーは創業時より防虫剤を製造してきました。従来はキャンディーのような錠剤がセロハンの包材に包まれており、使用の際には錠剤の効果を揮散させるため、セロハンの四隅をわざわざ切る必要がありました。そういった手間を省くため、世界で初めて和紙包材で包まれた防虫剤「ネオパラコーナー」を発売しました。「切らずに使える」防虫剤が話題になり、これをきっかけにエステーは防虫剤市場でシェア1位を獲得しました。
その後時代のニーズに合わせ、ナフタリンによる防虫剤特有の「ニオイ」がつかない「ムシューダ」ブランドを誕生させました。

「若者の防虫剤離れ」を食い止めろ。

防虫剤市場は2000年をピークに縮小傾向。要因はいくつかありましたが、メインユーザーが40~60代となり、30代以下の若い世代に広がっていないことが要因のひとつでした。若い世代が防虫剤を使わない背景には通年エアコンの効いた室内で過ごすことが多く夏物と冬物の区別がなくなってきていること、ファストファッションの流行により防虫剤を使って保管した〝とっておき〟を大切に着続ける感覚が薄れていることが想定されました。また、そもそも虫食いされやすいウールやシルクの衣類の所有率が低く、「虫食いを知らない」という人も増えていました。
エステーは防虫剤市場で高いシェアを占めていたとはいえ、大きな危機感を抱き、毎週のように企画会議が開かれていました。

香りブームに着目。

防虫剤の必要性を感じない若い人たちに防虫剤を使ってもらうにはどうしたらいいか。「ムシューダに香りをつけたらどうか」。商品開発グループの若手社員から案が出されました。「洋服を着た時に良い香りをまといたい」という昨今の香り付き柔軟剤ブームによるお客様ニーズに着目し、防虫剤にも香りをつけてみようと考えたのです。 こだわったのは、やはり香りでした。どのような香りなら、においがきつすぎず、いつもまとっていたいさわやかな香りになるのか。柔軟剤や洗剤の香りを参考に、もう一つの主力事業である消臭芳香剤で培ったノウハウを活かし、清潔感のあるソープの香りと、誰からも好かれるフローラルの香りの2種類に絞り、試作を重ねました。

ムシューダに、香りが付く矛盾を逆手に。

ムシューダは、ネーミングが表すとおり「無臭」という効能を全面に押し出してきた商品です。そこに、香りをつけることに対しては社内から異論もありましたが、社長の決断により発売が決定。2010年の発売時には「ニオイが付かないのがムシューダですが、この度、ステキな香りのする『かおりムシューダ』をつくってしまいました」と、ネーミングの矛盾をあえて強調しました。またこれは新たなブランドではなく、おなじみのムシューダブランドの「香り付き」新商品としてアピールすることで、お客様に安心して手に取ってもらうための戦略でもありました。かおりムシューダのメインターゲットは「防虫剤を使ったことがないが、香りには敏感な若年層」であるため、香りつきのシールを付け、香りを確かめられるようにしたり、防虫剤売り場以外の柔軟剤売り場などでの関連陳列の提案をしたり、商品に触れる機会を増やしました。

世代を超えて使ってもらえる商品に。

当社独自の調査で、かおりムシューダは狙い通り20~30代の方に多く購入いただいています。これまで防虫剤のメインユーザーであった50~60代の方々の子供世代にも防虫剤を使ってもらい、衣替えという日本の習慣を伝え受け継いでいってほしい。またムシューダブランドの強化を図り、全世代から使ってもらえる商品に育てていきたいと考えています。