季節のくらし

クリーニングのプロに聞く! 夏服“しまい洗い”のポイント

1.しまい洗いの基本

衣類をいつまでもきれいに着るためには、衣替え前のケアが肝心。1シーズン分の汚れをしっかり落として収納する“しまい洗い”で、変色や虫食いを予防しましょう。クリーニング綜合研究所・所長の小野雅啓さんに、しまい洗いのコツをお伺いしました。
デリケートな洋服のケアやクリーニング屋さんの活用法などもご紹介!
小野雅啓さん
クリーニング綜合研究所・所長
小野雅啓さん
プロフィール
小野雅啓さん

プロフィール

クリーニング綜合研究所・所長
小野雅啓さん
昭和53年、北見工業大学工業化学科修了。同年、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会・クリーニング綜合研究所入所。クリーニングにより発生した衣料事故の原因調査業務を担当。その後、平成22年同連合会理事、平成23年クリーニング綜合研究所所長に就任、現在に至る。
繊維製品品質管理士資格を所持。平成17年より文化女子大学(現・文化学園大学)非常勤講師を兼任。
全国クリーニング生活衛生同業組合連合会
http://www.zenkuren.or.jp
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衣替えシーズンに押さえておきたい“しまい洗い”とは?

去年のシャツを久しぶりに出したら、襟元の色が変わっていた……なんて経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか? 
黄ばみや虫食いが発生するのは、収納する前にしっかり汚れを落としていないことが原因のひとつ。気づいたときには、もう手遅れになっていることもあるでしょう。
そこで徹底したいのが、汚れを落としてから収納する“しまい洗い”。夏服は特に汗や皮脂をたっぷり吸っているため、さほど汚れていないように見えても、丁寧なケアが必要なのです。

夏服“しまい洗い”3つのポイント

1.汗染みや皮脂汚れをケア

夏服で気をつけたいのは、なんといっても汗や皮脂。一見汚れていなくても、一度着れば必ず汗や皮脂の汚れがついているものです。時間が経てば経つほど落としにくくなり、黄ばみや虫食いの原因になってしまいます。
綿やポリエステルの白物に生じた黄ばみは、粉末の酸素系漂白剤で除去できる場合があります。においが気になるときにも有効です。50℃程度のお湯に適量を溶かして、20分ほど衣類をつけ込みましょう。ただし、色柄モノにはNGです。          
特にジャケットやスラックスなどの頻繁に洗えない衣類は、気づかない間に汗を吸着しています。襟元や袖、ポケット口などのチェックを習慣づけたいところです。

2.自宅での洗濯はすすぎに注意を

家庭で洗う場合、粉石けんはすすぎが悪いと、黄ばみの原因になる可能性があります。また、お風呂の残り湯で洗うときも、すすぎにはきれいな水を使ってください。

3.衣類はしっかり乾かしてからしまう

衣類が湿気や水分を含んでいると、カビや黄ばみが発生しやすくなってしまいます。長期間衣類を保管する衣替えでは、洗濯やクリーニングのあとに陰干しなどで充分乾燥させてから収納しましょう。衣装ケースなどの収納場所に除湿剤を使うのも効果的です。

染みはとにかく早めの対処を

汚れは、定着する前に落とすのが基本。うっかりつけてしまった醤油やファンデーションなどの染みは、うしろに当て布をして、染み抜き洗剤や水に浸した布で優しくたたき、汚れを移していきます。こすると生地を傷めるので要注意。

2.衣類のケアと収納

基本のしまい洗いを覚えたら、次は日々のケアや収納方法を学びましょう。近頃は洗濯機が高性能化しているため、デリケートな洋服でも自宅で手入れできる場合があります。

デリケートな洋服を自宅でケア

絹やレースなどの洋服や水洗い不可と書かれている衣類でも、洗濯機の手洗いコースやドライコースでおしゃれ着用洗剤などを使えば、洗えることも。ただし、自分で判断するのが難しいときは、無理に自宅で洗おうとせず、クリーニング屋さんを活用しましょう。

洗濯ネットを上手に使おう

型崩れしやすいものや飾りが細かいもの、ボタンやホックがひっかかりやすいものは、洗濯ネットを使うのがおすすめです。ネットのサイズは、洋服を一枚入れてぴったり収まる大きさが最適。洗濯中にネットのなかで洋服が泳ぎ回り、生地がこすれて傷むのを防ぎます。毛羽立ちが気になる衣類は、裏返して洗うのもポイントです。

衣類を傷めない収納のコツ

きちんと洗えた衣類も、適当に収納していては台無し。たんすやクローゼットに詰め込みすぎると、しわになったり、防虫成分が充分に行き渡りません。ポイントは、収納スペースに、余裕を持たせて衣類を入れること。重みで型崩れしてしまうニットなどはハンガーにかけず、たたんでしまいましょう。虫食い対策として防虫剤を、湿気・カビ対策に除湿剤を入れておくと、より安心です。

3.クリーニング店活用術

自宅でケアできない衣類は、プロの力を借りましょう。クリーニング屋さんにお願いしたい衣類や、店頭で相談したいポイントをまとめました。

クリーニング屋さんにお願いしたい衣類

水洗い不可やドライクリーニングなどの表示があり、自宅で上手に洗えないものや、傷みやすそうな細工があって仕上げが難しいものなどは、クリーニング屋さんにお願いするのがよいでしょう。
自宅で落とせなかった汚れでも、プロの手を借りればきれいになる場合もあります。特に絹やウール、レーヨンなどの洋服は下手に自分で処置をせず、まずプロに相談するのがおすすめ。汚れを隅々まで落とし、美しく仕上げてくれるクリーニング屋さんは、しまい洗いにぴったりです。

店頭で伝えておきたいこと

衣類をお店に持ち込むときは、洋服の状態を正しく伝えることが、よいクリーニングにつながります。

「汗をかいています」
普段より多くの汗をかいた場合は、必ず伝えましょう。衣類の素材や洗濯難易度によって、ベストな汗抜きの方法を提案してくれます。

「いつ、〇〇で汚れました」
一見似たような染みでも、原因によって処理の方法が変わってきます。油やソース、化粧品など、何で汚れたかを伝えることで、適切な処置をしてもらえるはずです。

「ここにほころびがあります」「ボタンが取れそうです」
洗ったあとのトラブル防止に、ぜひ伝えておきたい一言です。ブランド品などの場合はボタンが傷つくのを防ぐため、洗う前にいったんすべてのボタンを取り外すケースもあります。

よいクリーニング屋さんを見つけよう

よいクリーニング屋さんの条件は「丁寧な仕事をしてくれること」。実際に洗っている姿は見えなくても、受付や洋服の分類、状態の確認方法など、チェックできるポイントは多々あります。組合加盟店など、細部までしっかり対応してくれるお店を選びたいところです。
また、便利なネット注文よりも、細かいことを相談しやすい対面式のほうがメリットになることも。店主が仕事の流れをすべて把握している個人店もいいでしょう。クリーニング屋さん任せにせず、大事な衣類について、いろいろお話をしてみてはいかがでしょうか。

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