季節のくらし

秋の衣替えから始めよう 動線やルール作りで変わる!効率がぐっとアップする衣類収納(秋編)

1.普段の収納を見直す

春と秋の大きなイベント「衣替え」。1日もあれば終わるけれど、なかなか重い腰が上がらない人も多いのではないでしょうか。でも、普段からきちんと衣類の収納ができていれば、衣替えもぐっと手軽になるのだそう。理想の整理&収納を実現するテクニックを、整理収納アドバイザーの伊藤朋美さんに聞きました。
伊藤朋美さん
整理収納アドバイザー
伊藤朋美さん
プロフィール
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整理収納アドバイザー
伊藤朋美さん
整理収納アドバイザー、インテリアコーディネーターとして”家が整えば毎日はもっと輝く”を合言葉にシンプルで快適な暮らし方を提案している。個人宅の整理収納サービスから企業とタイアップした収納サービスなど、幅広く収納コンサルティングやセミナー講師で活躍する他、コラム執筆、雑誌監修などでも活躍中。10年以上に渡る住宅メーカーでのリフォーム提案で培ったプロのノウハウと、自身も2児の母であり、かつては片付けが苦手だったと自負する等身大の経験に基づくアドバイスが、女性たちからの信頼と人気を博している。
公式ブログ http://ameblo.jp/re-style-okataduke/ 元片付け下手ならではの整理収納の実例やアイディアなどを公開中。
HP http://re-style-t.com/
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まずは収納の問題点を探るところから

衣類収納にまつわる不満のトップ3は、1位「収納スペースが少ない」、2位「衣類の出し入れがしにくい」、3位「家族が自分で収納できない」(エステーの2014年調査による)。自分のことを「収納下手」だと思っている人は多く、実際に約半数の家庭で、部屋に衣類が出しっぱなしになっているようです。

「ゆっくり片付ける時間がない」「そもそも収納が苦手」などの理由を口にする人が多いけれど、実は違います。本当は「洋服が捨てられない」「アイテムが増えやすい」「衣類をたたむのが嫌い」など、人それぞれの問題点があるはずなのです。

苦手なポイントにアプローチすれば、誰でも理想の収納が作れます。衣類をたたみたくなければ”吊るす収納”、収納スペースを有効に使いたいなら”たたむ収納”など、最適な解決法を探しましょう。知らず知らずのうちに、自分に合っていないルールを作ってしまっている可能性もあります。大がかりな整理をする衣替えは、やり方を見直すチャンスです!

使いやすい収納環境を作る

「上手にしまえない」「決まった場所に収納するのが苦手」という人は、収納環境に問題があるかもしれません。たとえば、収納用品が使いにくい場合。引き出しが重かったり硬かったりするだけで、家事の効率はぐっと下がってしまいます。昔ながらのどっしりした木製たんすは、持っている衣類をいったん置いて両手で引っ張らないと開けられないかもしれません。そんなときは、片手で引き出せる衣装ケースに日常の衣類を移すのも手です。

また、サイズが大きい引き出しは詰め込んで重たくなったり、たわんでしまいがち。たとえば、奥行きの長い引き出し1つ×3段よりも、短い引き出し2つ×3段のほうが使い勝手はよいのです。
引き出しが多ければ分類もしやすく、手前によく使うもの、奥にオフシーズンのものを入れれば、出し入れに困ることもありません。一つひとつの引き出しが小さいため軽くなり、乾燥機の近くまで持ち運んで、その場でたたんだ衣類をしまうこともできます。
クローゼットなら、出し入れしやすい正面には普段よく着る衣類をかけること。色や素材、種類などから決めた収納ルールにとらわれ、使いにくい場所にデイリーユースの洋服をかけている人も少なくないそうです。両開きの折れ戸なら、両サイドには手を伸ばしにくいデッドスペースができるはず。そこにオフシーズンの洋服をかけておくなど場所の工夫をしてみましょう。
また、ハンガーの色や形を揃えるだけでクローゼットの中がすっきり見え、美しい状態を保つモチベーションになりますよ。

空間を区切れば収納力はアップする!

「収納スペースが少ない」という悩みは、空間を区切ると解決できるかもしれません。
クローゼットのように大きな空間は上下・前後に分けること。高さの違うポールを2本付ければ、上下で約2倍の洋服がかけられます。奥行きがあるようなら、前後に2本付けるのがおすすめです。前のポールにはオンシーズン、後ろにはオフシーズンの洋服をかけられるようになります。

引き出しの中は、仕切りを上手に活用しましょう。ブックエンド型よりも、しっかりと自立する箱状の仕切りを使うのがおすすめ。はじめは家に余っている紙袋でボックスを作ってみて、収納性や使い勝手を確認できたあとに市販の仕切りボックスを購入すると、無駄がありません。
作り方は簡単で、紙袋の持ち手を取り外したら、引き出しの高さに合わせて上部を内側に折りこむだけ。空間にジャストサイズの仕切りが簡単にできあがります。深い引き出しなら、上下に紙袋ボックスを2段重ねてもよいでしょう。


ちょっとした工夫で見やすく、使いやすく

箱に入れて収納するようなオフシーズンの衣類やスポーツ用品などは、きちんとラベリングをしておきたいところです。「春夏Tシャツ」「スキー用品」などと見やすい位置に書いておくだけで、探す手間が減ります。文字だけでイメージしづらいなら、写真やイラストで視覚化するのもおすすめ。自分の見やすいラベリングを探しましょう。
また、枕棚やベッド下収納といった出し入れしにくいスペースには、取っ手付きのケースを入れるのが鉄則です。

2.キレイな家を保つには

きれいに収納したはずなのに、いつのまにか衣類が外に出ている。家族がすぐに散らかしてしまう。よく耳にする悩みです。その原因は何なのでしょう? 家族の行動や収納までの動線を踏まえて、家全体でベストな収納場所を考えてみませんか。

家族の行動や家事の動線を考えよう

洗濯機から濡れた衣類を取り出して、ベランダに干し、リビングに取り込んでたたみ、寝室のクローゼットに収納する……気づけば、家を一周してしまっていませんか? 動線が長いほど、家事が手間になってしまいます。洗濯→干す→取り込む→たたむ→収納→着替え、という一連の流れと場所を確認して、できるだけ短くしましょう。
たとえば、洗濯物を干しているベランダの近くや、子どもが着替えているリビングに収納があれば「たたむため」「しまうため」「着替えるため」だけに場所を移動する必要はなくなります。ほとんど見ていない本やDVDがリビングに置かれているなら、思い切ってその収納に子どもの着替えを入れてみましょう。朝の支度もぐっと楽になるはずです。

そのほか、お風呂あがりに身に付ける下着やパジャマは洗面所へ。夫がリビングで脱ぎ散らかすのを防止するには、玄関に仕事グッズやスーツの保管場所を作るのが有効です。着替える場所が玄関から遠い寝室などにあると、なかなかそこまで行ってくれないものなのです。
家族の行動や家事の動線を考えて収納すれば、自然と片付けやすい部屋になります。そのためには、部屋の用途替えや収納場所の変更を視野に入れることも必要です。

散らからないようにする工夫

散らかる原因は、動線以外にも考えられます。細かいルールを決めすぎていて、守るのが難しいのもそのひとつ。疲れているときなどは、脱いだ物をすぐ洗面所に運べないかもしれません。そんなとき、ついソファーにかけてしまうと散らかって見えてしまいますよね。
おすすめは、ランドリーボックスをひとつリビングに置いておくこと。温度調節のために脱いだキャミソールや、一度着ただけのカーディガンなど、シワにならない衣類は何でもそこに投げ入れればOKです。クローゼットの手前に、一度着たけれどまだ洗わない服をかける専用フックを付けてもよいでしょう。ゆるく守れるルールを作っておけば、家中に衣類が散らばることは減るはずです。

リバウンドしないためのルール

「つい洋服を買ってしまう」「さまざまな物が増えやすい」という方は、買い物の根本を見直す必要があります。セールやまとめ買いが好きな人は、収納の許容量を超えて物を増やしてしまいがちなのです。
とはいえ、持っている洋服の数を細かく把握するのは手間。枚数ではなく、空間を決めるのがポイントになります。「この引き出しに入る分しか持たない」という意識を持てば、物があふれることはありません。見える量しか持たないことで、たまにしか使わないアイテムでもどこにしまってあるかすぐにわかります。クローゼットの場合も、ぱんぱんになるまで詰め込まず、洋服を左右に動かせるだけの余裕を持たせておきましょう。

ひとりで管理できる洋服は、オールシーズン合わせて100枚までが目安。”1枚買ったら1枚手放す”とルールを作ってもいいですね。セールなどのたくさん買ってしまいそうなときには、出かける前にまず不要な服を出しておくのがコツ。「スペースもできたし、新しい服を迎えに行く準備は万端!」と、買い物の楽しみも増えるはずです。

3.衣替えのコツ

持っている洋服を一覧できる衣替えは、日々の収納を見直すチャンス。この機会に効率化をしておけば、来シーズンの衣替えもぐっと手軽になります。

衣替えでワードローブをチェックする

衣替えは、持っている洋服を一覧するチャンスです。せっかくの機会に、不要なものを処分しましょう。
たとえば、一度も着ないままシーズンを終えてしまった洋服は、おそらく来年も着ないはず。「シルエットが気に入らない」「繊維がちくちくする」といった”着ない理由”を探してみて、解決できないなら思い切って手放しましょう。捨てられない人は、リサイクルや寄付をするのも方法です。高価だった洋服も、着ていないならもう価値はありません。買ったときの値段ではなく、今の自分にとっての価値を考えるようにしてみてはいかがでしょうか。
そのほか、似たような服が多い場合も改善の余地あり。Tシャツやズボンなどのジャンル別に並べれば、自分の買い物のクセが見えてきます。同じような洋服は処分して、次からは同じ失敗をしないように気を付けて下さいね。

家族を巻き込む環境作り

衣替えは自分ひとりでするものだと思っていませんか? 家族の手を借りれば、もっと楽に済ませることができます。そのためには普段から「どこにケースがあればしまいやすい?」などと家族の意見を取り入れたり、収納に関して積極的にコミュニケーションを図ることがおすすめです。
また、取り込んだ洗濯物はそのまま家族別のカゴに仕分けして、たたんで収納する作業をそれぞれに任せるのもグッドアイディア。妻や母親が作った収納ルールは、なかなか他の家族に把握してもらいにくいもの。ルールや環境を作る段階から家族の参加を促すことで、衣替えや普段の収納にも協力してもらいやすくなるのです。

「この服何とかして!」で通用しない人には理論的に伝えよう!
感情的に言っても人にはなかなか伝わりません。特に男性には、理論的に話をするのが効果的。
たとえば、夫の衣類を減らしたいときは、家賃から収納の月額費用を割り出して「あなたの洋服を保管するのに、毎月1万円かかっているの。私の分も来月末までに半額にするから、一緒にやってみない?」などと具体的な数値目標を提示します。男性は、具体的な目標を見せられると頑張ってくれる人が多いのです。「一緒に」という言葉も、家族を巻き込む、よいキーワードです。

収納場所の掃除や防虫剤を入れ替えるタイミング

たんすの引き出しを拭いたり、防虫剤を入れ替えるのも、衣替えが最適なタイミングです。収納場所にホコリがたまっていると、衣類につく虫のすみかになります。近頃は1シーズンしか着ないようなファストファッションも流行していますが、大切な衣類には防虫対策が必須です。衣替えをしないと、防虫剤の使用期限が過ぎていることに気づかない場合も。また、湿気も衣類には大敵です。この機会を利用して、防虫剤や除湿剤を入れ替えましょう。

効率的な衣替えのコツ

シーズンごとの衣類を普段から分類しておけば、衣替えは劇的に手早く済むようになります。前述の内容を参考にして収納空間を上下や前後に区切ったら、オンシーズンのものを手前に、オフシーズンのものを奥にスタンバイさせておきましょう。季節がきたら、場所を入れ替えるだけでOK。すぐさま衣替えが完了します。
ただし、秋冬物のほうがかさばるため、春夏物をしまうときには余裕があるはず。ここで「まだ入る」と思って買い物などをしてしまうと、次シーズンの衣替えで衣類があふれてしまいます。春夏物→秋冬物を入れ替えるときは、少し余裕があるくらいがベスト。重ね着などで通年着られるものは、無理に季節を分けなくても、出しっ放しでかまいません。

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