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嗅覚を育てると子どもはどう変わる? 「香育」の取り組みとその狙い


皆さんは、自分や子どもの「香りを感じる力」を意識したことがありますか? 健康診断などで測定する視力や聴力と違って、嗅覚を意識する機会はあまりないかもしれません。そんな中で、子どものうちから香りの感受性を磨き、表現する力をつけようとする取り組みが(公社)日本アロマ環境協会が推進する「香育」です。日本アロマ環境協会事務局の小池吏さんに、詳しくお話を聞きました。

Q.香育ではどんなことを行うのでしょうか?

香育は、小中学生・高校生を対象に、さまざまな香りを体験し、学びを深めてもらう教育プログラムです。精油や植物を使ってさまざまな香りを実際に体験しながら、「香りとは何か?」「香りと嗅覚の役割」「精油の種類や作り方」「自然と香り」といったテーマを学習します。
香育の学びを通して、日々の生活や自然の中の香りに関心をもってもらえれば、「地球は香りで満ちた星だ」ということに気づくはず。自然環境を大切にする姿勢をはぐくむ一助になりたいと考えています。

香育に使用するオリジナルのテキスト。問いかけによって自発的に考えさせる構成に。
出展:(公社)日本アロマ環境協会『かおりのはなし』

Q.精油は植物から抽出される香りですから、自然を見直すよいきっかけになるのですね。体験の価値を高めるポイントはどんなところでしょうか?

私たちは、体験した香りを、アウトプットすることが大切だと考えています。はじめは好き/嫌いから、香りをどんなふうに感じたかを発表してもらいます。子どもたちは本当に正直で、好みに合わなければストレートに「くさい」といいます。大人だと気を使って「珍しい香りですね」なんていい方をしますが(笑)。

感受性に正解はありません。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、といえる環境を大事にしています。嗅覚は五感の中でもダイレクトに脳に届き、感情や本能に働きかけると言われています。さまざまな香りを嗅ぐことによって、子どもたち自身が感じたことを素直に言葉にして、表現する機会にしたいのです。

 

「香育は環境を考え、行動に移すためのきっかけになる」と小池さん。

Q.香育を実施する学校が年々増えていると伺っています。なぜ嗅覚の教育が必要とされるとお考えですか?

最近では子どもでもストレスを抱えてしまうことが多いと聞きます。養護の先生から香育の依頼を受けることもあります。香りに意識を向けることで、気分転換できたり、ストレスが和らぐこともあることを知ってもらえたらと思います。

香育の講師は、日本アロマ環境協会の有資格者が行います。

Q.香育を受けた子どもには、どのような変化がありますか?

さまざまな種類の精油をかぐと、はじめはたいてい柑橘系の香りを好みます。たとえば、ラベンダー、ペパーミント、オレンジの3つの香りの中なら、オレンジを好きだという子が多いのです。普段の生活の中で感じている香りで、しかもおいしいものだとわかっているからでしょう。

反対に、初めてかぐ香りは拒絶反応を起こしやすいですね。しかし、香りに親しんでいくうちに、ポジティブな感想を言う子が増えてきます。 経験したことのない香りに触れることで、好みが変わっていくのですね。

複数の精油を体験して、出会ったことのない香りが好きになり、その素である植物に興味を持ちます。植木を育ててみる子もいるし、キンモクセイの香りに秋を感じるようにもなります。植物の香りを通じて季節を感じることは、自然を大切にする気持ちを育み、毎日の生活を豊かにします。 これこそが、香育の狙いです。

まとめ

小池さんは、取材の中で環境省の「かおり風景100選」を紹介してくれました。自然や町並みの中にある香りと美しい景色が、全国からセレクトされています。「私たちは景色を見るだけでなく、五感を使って楽しんでいます」と小池さんは話します。
以前、空気チャンネルが取材した「森林セラピー」でも五感で森を感じることを学びました。物事を視覚や聴覚だけで認識せず、嗅覚を少し意識するだけでも、日々の仕事や遊びの世界が広がっていきそうです。