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空気に真剣な5人があらためて考えた「在宅介護」とにおいの問題(後編)



エステーは今年5月、在宅介護向けの消臭剤で初めて「介護用品」分野に参入しました。インタビュー企画の後編は、"におい"の問題から一歩踏み込んで、在宅介護のざまざまな課題を考えます。

介護用品はほしくない? 表に出ない介護のストレス

介護用品の新ブランド「エールズ」の開発に携わったメンバー5人に、現場で感じた在宅介護の課題について聞きました。前回の記事はこちらをご覧ください。

[編集部]孫の大高さんがポータブルトイレの処理、というのが少し意外だったのですが、実家では誰が主に介護していたのですか?

[大高]主に母が介護していました。祖母は母の実母でしたが、ポータブルトイレのことは祖母は私に直接頼むことも多かったです。

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“仙台の実家で学生時代に祖母を介護した経験のある大高”

[高岳]在宅介護のお宅に伺うと、人間関係の難しさは感じました。実の母娘だからこそ、複雑なところもありますね。

[岡部]介護者、被介護者、その家族と、それぞれ思いは違って一筋縄にはいきません。肩の荷が重い介護者に話を聞くと、さまざまな不満や家族に対する引け目やわだかまり、将来に対する不安など、溜まったものを一気に話される方が多かったですね。

[松村]インタビュー中に泣き出しそうになって、話す人もいました。その後、感謝のお手紙までいただいて。「悩みをはき出せる場所がない」というのが現実なんだ、と強く感じました。

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“職種に関係なく在宅介護の現場へ。ユーザーの話になると自然と熱が入ります”

[大高]介護のストレスとうまく付き合っている方にも話を聞きました。相談する相手がいること、専門家に頼れることがポイントですね。介護の経験がある人、少しでも見てきた人は、専門家への頼り方を知っているのかもしれません。
ところが、在宅介護はときに突然日常に現れます。そんなとき、最初から誰もが対応できるものではないですよね。

[岡部]私は、介護そのもののマイナスイメージが大きすぎると思うんです。被介護者の状態は悪くなることが多いし、支えている介護者も年をとり衰えてきます。
「いつまで続くのか」「いつまで支えられるか」と、介護者は大きな不安をかかえていることは、今回よくわかりました。同じトイレの世話でも、成長に向かい、いつか手を離れる育児とはやはり違います。
ドラッグストアなどの売り場を見てもそれは明らかで、店頭に積み上がっているのは子ども用おむつです。いまや、市場は大人用おむつのほうが大きいのに。
その他の介護用品も、店の奥にあることが多いしディスプレイは地味。商品の種類も点数もまだまだ充実していないし、介護商品に対する店員さんの知識もこれからです。

[田澤]在宅介護が突然はじまって戸惑っている人や、モヤモヤを抱え込んでいる人が、自然とストレスを積み重ねてしまう環境なのでしょうか。専用の商品があること、売場がにぎやかになるだけでも、介護者に寄り添うことに、なるように思います。

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“入社1年目でエールズを担当する研究担当の田澤”

[松村]その「寄り添う」スタンスを伝えることは重要で、どうやって表現するか? と話し合いを重ねました。ネーミングやパッケージは練りに練りましたね。最終的に、「できるだけ介護のイメージはないほうがユーザーの気持ちには合う」という結論になりました。

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“商品の機能だけでなくパッケージにも苦心したと商品開発グループの松村”

[編集部]介護用の商品なのにあえてそれを謳わない?

[大高]においはみんな気にしていて、従来品を使っているけれど満足度は低い。だから「専用品」はほしい。けれど「介護用品」はほしくない。そんな複雑な気持ちが見えてきたんです。

[松村]当初は、「介護」の文字がまったくないパッケージも考えていたほどでしたよ。

[岡部]社内では、「介護」という文字をもっと目立たせた方がよいという意見もありましたが、最終的にはブランドロゴの下に「介護家庭用」と小さく記載するにとどめました。
そのかわり、ブランド名やロゴマークには非常にこだわりました。「エールズ」には日々の暮らしを応援して前向きな気持ちにしたいというメッセージを込めています。また、日の当たらないイメージがある介護現場を、明るい場所にしたいという思いを込めて、太陽のロゴを採用しました。

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“パッケージではあえて「介護」の色をおさえています”

介護の課題をいかに解決していくか

[編集部]「エールズ」の開発を通して、介護現場の課題が見えてきたと思います。改めて、エステーとしてどのように課題解決していくか、という将来のビジョンはありますか?

[岡部]まずは、エステーの社員、バイヤーさん、小売店と、流通に関わる人から「エールズ」のコンセプトに共感してもらうこと。介護の課題に取り組む上でも、商品認知の上でも、共感こそカギでもあると思います。
将来的には、消臭以外の困りごとに対しても、介護現場の不満を解消して行きたいです。「空気」を事業ドメインとするエステーの立場からできることを。

[田澤]「エールズ」は、4月に入社してはじめて担当した商品です。私自身、介護の経験がなく実感もありませんでしたが、介護問題は日本の社会で間違いなく大きくなります。「エールズ」シリーズの研究開発を通して、課題の解決に取り組んでいきたいです。

[高岳]研究の担当者も介護現場にできるだけ足を運び、介護者や被介護者の方が、何に対してどのような不安を感じているかを自分の肌を通して知ること、感じることは非常に重要だと思っています。
その上で、研究という立場から介護現場の課題を明確にし、どんな技術を使ってどのように解決できるかを積極的に考え、解決策を提案していけたらいいですね。

[大高]介護を特別な作業にしない日用品を、提供したいと考えています。私の経験で言えば、ポータブルトイレのにおいを我慢しながら、それを祖母に感じ取られないよう処理するのは、特別な努力が必要な作業でした。
炊事や洗濯のような日常の一部に、介護の作業が近づけられないかと思うんです。私たちのできることで、それをお手伝いできればと思います。

[松村]売場をみていると、子ども用のおむつと大人用おむつでは、買う人の目の輝きがまったく違います。岡部が指摘したように、介護には暗いイメージがつきまといます。
私は、在宅介護に明るく取り組む家庭を増やしたい、と考えています。在宅介護であっても、家族みんなの事情を尊重しながら、楽しい気持ちのまま一緒にくらしていける――エールズを引き続き研究・開発するなかで、そんな家庭の形を見出して行きたいのです。

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“「エールズ」チームの活躍に乞うご期待!”