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「脱臭炭」すごい力の秘密を探る!①~手作り備長炭職人インタビュー~


昔から、空気や水のにおいをとるために使われてきた炭。その炭の脱臭力を応用して開発されたのが、エステーのロングセラー「脱臭炭」です。「空気チャンネル」は、「脱臭炭」の脱臭パワーをひもとくべく、原料の備長炭が作られている和歌山県をたずねました。 原料となる紀州備長炭は、和歌山県の「炭焼きさん」たちによって手作りされています。そのおひとり、田中信幸さんの炭焼き小屋にお伺いしました。

高品質の紀州備長炭はこうしてできる

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“田中信幸さん、純子さんご夫妻と炭焼き窯の前で”

Q.備長炭ができるまでの作業を教えてください
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A.原木を窯で焼きはじめてから、備長炭ができるまでに15日間かかります。
まずは窯に原木を立て(木入れ)、1日開けて「口焚き」をはじめます。窯の口で雑木を焼いて原木の水分を飛ばす作業です。5日かけてゆっくり水分を抜いたら、窯の口を閉じて蒸し焼きにする「着火」が6日間。原木が炭化したところで、24時間かけて徐々に窯の口を開けて温度を上げ、二度焼きにします(ねらし)。焼きあがった炭は、1日で取り出して灰をかけます(窯出し)。

職人技といえばかっこいいのですが、基本的には肉体労働です(笑)。備長炭は「ウバメガシ」という樫の仲間が原料で、すべて私と妻がチェーンソーで山から切ってきます。ウバメガシはギュッと身の締まった硬い木質で、ガケのような険しい場所を好んで自生します。1回に使う原木の3.5トンを切るのに2人で4日間。危険も伴うのですが、妻はよくやってくれていますね。

「木入れ」のときは、窯の中の温度は、天井付近で200度にもなります。太い木から奥に並べていくのですが、基準になる最初の1本が大変です。暑いけれど長袖長ズボン、全身を布で覆って、窯の中に入ります。中には、5秒ほどしかいられませんね。全部で3.5トンのウバメガシを入れるわけですから、作業は1日かかります。

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“ウバメガシを伐採する山。写真ではわかりにくいですが、かなりの急斜面で、慣れない人は立っているのも難しいほど。切った木はモノレールで運搬します”

紀州備長炭ってなに?

田中さんも実践する昔からの製法を用い、和歌山県でつくられた炭を言います(和歌山県木炭協同組合が商標登録)。多くはウバメガシの木を原料とし、窯の中で立てて焼くのが紀州備長炭の特徴です。高温で蒸し焼きにし、窯の外で灰をかけて温度を下げます。灰が炭を覆って白く見えるため「白炭」と呼ばれています。硬く引き締まり、火持ちのよいことが特徴で、古くから高級品とされてきました。
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“田中さんが焼き上げた備長炭。爪ではじくと「カーン」と気持ちのよい音が”

脈々と受け継がれる職人の技

Q.よい備長炭をつくるために、経験や技術が求められるのはどんなポイントなのでしょうか?

A.窯での作業、特に「着火」「ねらし」ですね。

窯を焚いて原木の水分がなくなってくると、立ち上る白い煙が、徐々に黄みがかってきます。「透明感がなくなってくる」とも言えるでしょうか。炭焼きさんは「火がついた」なんて言い方をしますが、ウバメガシの炭化が始まるサインです。こうなったら、窯の口を閉じてしまい蒸し焼きにします。これが「着火」です。
タイミングを間違えると、ウバメガシが燃えてしまったり、うまく炭化しなかったりと、不都合が起こります。

4~5日かけて原木をゆっくり炭化させたら、少しずつ、24時間かけて窯の口を開けていきます。「ねらし」の工程です。
空気が入るので中のガスが燃え上がり、温度は1000度を超えます。「炭が締まる」なんて教わりましたが、「ねらし」によって硬く純度の高い炭ができあがります。失敗すると、形が崩れてしまったりと、備長炭の商品価値が下がってしまいます。

炭の出来は毎回変わるので、毎日が研究です。とはいえ、炭の出来は9割が窯のつくりによると言われています。職人の「腕」は1割程度。私の場合、先輩の炭焼きさんからよい窯を譲っていただけたので、とてもラッキーでした。

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“偶然、製作中の炭焼き窯を上からのぞく機会が。おにぎり型の構造がよくわかります”

Q.サラリーマンから炭焼きさんに転身されたと伺いました。どんなところに魅力を感じていらっしゃいますか?

A.はい、酪農機器メーカーで勤務していました。

独立して農業機器の仕事をしながら、自分で農業もして生活できればと考えていたんです。それで、手をかけずにできる農業はないか、と各地を見て回っていました。「みかんはどうか」と和歌山に来たとき、案内してくれた方が近くで炭焼きをやっていると。見に行ったら、「やってみないか?」と誘われたんです。
しいたけ栽培もしたいと思っていたので、木を切る練習にもなるし、と軽い気持ちでやってみたらおもしろくて。綿密にデータを記録したノートを見せていただいて、これなら職業として食べていけるとも思いました。子どもが3人いるので、すぐ仕事になるものでなければ難しかったですね。

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“取材時は口焚きの作業中。雑木を燃やして窯の温度をゆっくりと上げます”

炭焼きの仕事は、ほとんどが体力勝負で、技術や経験が物を言うのはほんのわずか。でも、そのちょっとした部分がおもしろくてやっています。炭が炭化するプロセスとか、科学的なことを考えるのが嫌いではなかったんですね。あとは、仕事が終わった後のビールが、最高においしいです!