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PM2.5など大気汚染の人体・健康への影響とは? ~埼玉大・王准教授監修~


汚れた空気、身体によくないのは何となくわかります。けれど、なぜ、どのように悪いのか? はご存じでしょうか? 身体への影響を知るべく、まずは空気の汚れの正体を整理しましょう。

大気汚染はPM2.5、NOx、光化学オキシダントに注意!

環境省が大気汚染の観測データを公開する「そらまめくん」のWebサイトでは、二酸化硫黄(亜硫酸ガス、SO2)や窒素酸化物(NOx)、光化学オキシダント(Ox)、そしてPM2.5などの情報を常に確認できるようになっています。
二酸化硫黄はぜんそくの原因として大問題になりましたが、現在は厳しい規制と処理技術が向上したおかげで、値が減少しています。問題なのは、近年関心が特に高まるPM2.5、NOx、光化学オキシダントの3つです。

PM2.5は人体の奥深くへ入り込む

「PM2.5」は物質の名前ではありません。空気の中にはさまざまな粒子が浮遊しており、その中でも径が2.5μm以下という、小さな粒子を総称した言葉です。毒性のある物質とは限りませんが、この「サイズ」自体が問題です。

人の身体には、さまざまなフィルターに似た機能があり、異物を吸い込んでも奥まで入らないようになっています。例えば鼻やのどの粘膜ですが、キャッチできるのは4.7μmまでの粒子。はるかに小さいPM2.5は、それらのフィルターをすり抜けて気管支や肺の奥深くに達し、長く居すわります。
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しかも、PM2.5の中には、自動車の排ガスや工場のばい煙など、有害なガスが化学反応を起こして生成されるものが少なくありません。ぜんそくや気管支炎といった疾患のリスクが指摘されています。
また、王先生の研究で、途上国の一部都市で肺がんの発症率が高くなっていることがわかっています。自動車の排ガスや工場のばい煙に由来するPM2.5の濃度が高いためです。PM2.5の中に重金属や金属酸化物を含んでいる場合は、特に毒性が強く、肺細胞を損傷させます。(※1)

PM2.5と花粉は最悪の取り合わせ

花粉はPM2.5よりサイズがずっと大きく(約30μm)、健康への影響は小さいと言われています。しかし、PM2.5 の大気汚染物質と触れあうと、花粉の細胞が破裂し、母体となる花粉から微細なアレルゲン物質(アレルギーを起こす物質)が放出されます。それもPM2.5よりさらに小さいPM1.0(1μm以下!)になってしまうこともあるのです。
小さいほど粒子が身体に入り込みやすくなり、花粉のアレルゲン物質とPM2.5の大気汚染物質が一緒になって、人体の奥深くに入り込みます。涙や鼻水といった従来の花粉症の症状だけでなく、せきやぜん息といった新たな症状も確認されています。
王先生によれば、都市部に住む人の約3人に1人が花粉症となっており、PM2.5の影響が大きいと推測されています。(※2)

クルマの排ガスに含まれるNOxは肺や気管支に

窒素酸化物(NOx)は、工場や火力発電所、クルマなどから排出されます。一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)などがあり、特にNO2を多く含むクルマの排ガスが問題視されています。車道では、国が定めた環境基準値の最大60倍になるという調査もあるくらいです。

PM2.5とは異なり、NO2はガス(気体)です。そのうえ他のガスより水に溶けにくいので、簡単に臓器の中に入り込みます。PM2.5以上に、肺細胞への炎症を引き起こし、気管支炎、肺気腫、喘息といった呼吸器系への影響が指摘されています。
しかも、PM2.5と同じく、花粉との組み合わせでさらに悪影響を生みます。NO2と結びついた花粉は、アレルギー性が強くなる可能性があるのです。二重三重の悪影響で、いま都市の花粉症は重症化していると言われています。
2015_06_05

光化学オキシダントはすぐに影響が現れる

光化学オキシダントの原因は、窒素酸化物(NOx)やVOC(塗料やガソリンなど有機物が揮発した化合物)など、都市に漂う汚染物質が原因。これらのガスが、エネルギーの高い太陽光中の紫外線に照射され、光化学反応(化学反応の一種)を起こして生まれます。濃度が高まり、空が白くなるほどモヤのかかった状態が「光化学スモッグ」です。
光化学スモッグは、日差しが強く気温が高い日に発生します。目がチカチカしたり、涙が止まらなくなる、胸や喉が痛くなるなど、すぐに影響が現れます。症状を感じたら、できるだけ外出を控えましょう。

いつも吸っている空気に目を向けよう

空気の汚れは、特に抵抗力の低い子どもやお年寄りに大きな影響があります。光化学オキシダント以外は、ただちに影響はないかもしれませんが、十分配慮していただきたいところです。
また、花粉と影響し合うなど、大気汚染の影響はさまざまなところに現れています。空気は自分で選べませんが、身のまわりの空気をケアすることで、思いの外くらしを快適に過ごせるかもしれません。

参考:関連する王先生の研究論文

※1
「Physicochemical properties and oxidative ability of ambient coarse, fine, and ultrafine particles in the atmosphere of Xuanwei, China, an area of high lung cancer incidence(中国肺がん高発症地域における大気中の粗大、微小、超微小粒子の物理化学的な特性と酸化能)」Atmospheric Environment国際誌に2014年1月掲載
「Comparison of cellular toxicity caused by ambient ultrafine particles and engineered metal oxide nanoparticles(大気中の超微小粒子とその金属酸化物ナノ粒子の細胞毒性の比較)」Particle and Fibre Toxicology国際誌に2015年4月掲載

※2
「Release behavior of small sized daughter allergens from Cryptomeria japonica pollen grains during urban rainfall event(都市部降水に伴うスギ花粉粒からの微小なアレルゲン物質の放出現象)」Aerobiologia (International Journal of Aerobiology)国際誌に2012年2月掲載
「花粉飛散時における環境汚染物質の影響とアレルゲン物質の放出挙動」エアロゾル研究誌2014年2月掲載

王先生の論文はこちらから。